【美術刀特注講座第1回】
美術刀の基本と特注の基本
この回では、美術刀とは何なのか、そして美術刀の特注の基本的な要素について纏めてます。
(※第0回と第1回を統合・整理しています)


■そもそも美術刀って何さ■

端的に言いますと、「模擬刀剣(模造刀)の中でも、主に飾り物用として安価に作られたもの」です。
ただし上記はあくまでも武装商店での分類ですのでご注意下さい。
(;´ω`)<基準・規格があるわけではないので、メーカー・問屋・小売店により違う分類がされている場合もあります。
(`ー´)<同じ「美術刀」という言葉を真剣の分類に使う事だってあるからね。

商品リストでは現在既に居合刀とは分けていますな。
国内の美術刀メーカーは2社で、ごく一部を除いた殆どの美術刀が、この2社で製作されています。
(`ー´)<一部例外的に他社製品が存在し、また最近は中国製もあったりします。

当店でもその2社双方から仕入れを行っております。
当店に限らず全国的に、比較的廉価な日本刀は殆どがこの2社の製品ですな。
で、特注可能なのはこのうち1社の製品のみとなっております。
(`ー´)<「黒石目大(打刀)、小(脇差)」「黒呂鞘大(打刀)、小(脇差)」「熊猫壱型」他ごく一部が、特注できないほうのメーカー製。
(;´ω`)<そっちのメーカーは仕入れに同じ商品が一定本数必要なんで、個人の特注には対応できないのです。

品質的には2社とも大きな差は無く、価格相応。
鞘は木製ですが柄は樹脂製、柄糸は化繊です。
刀身は主に美術刀用合金(亜鉛合金)で、各種金具も美術刀用のモノです。
(`ー´)<鞘の木の質も居合刀のものと違ったりしますので、ぶっちゃけ居合刀との共通パーツは「ありません」。
(;´ω`)<形状は同じ日本刀なんで、中には居合刀と美術刀の部品が混ざった半端な規格の商品も存在します。ウチの店で言うと「居合練習刀」扱い。


■美術刀特注で出来ること、出来ないこと■

で、講座タイトルの通り、美術刀でもお客様の注文に基づいてオーダーメイド、つまり特注が出来るわけですが。
細かい説明は今後の講座に譲るとしまして、
居合刀に比べれば、美術刀の方が「出来ること」の自由度は下がります。
ただ一方で美術刀にしか無い金具・鞘塗などもありますので、必ずしも一概に言えるものでもないかも?
(`ー´)<まぁその気になれば本歌用部材使える居合刀よりも自由度高く、とはならんですよ。

なお、美術刀メーカーは、日々色々と新仕様を作り出しており、
出来ることはじわじわと増えていってますね。
(`ー´)<まぁ勿論その一方で、絶版になる部材とかもあったりはするけどね。


■美術刀特注の際のお約束■

基本部分は居合刀特注とほぼ同じです。
すなわち、
・全額前払い
・納期確約なし
・製作開始後のキャンセル/仕様変更不可
この3点は、美術刀でも変わりません。
ただ、美術刀は居合刀に比べれば安価であるのは勿論として、
納期も居合刀に比べればたいていの場合大分短く済みます。
(`ー´)<そして品質は勿論美術刀相応、と。
(;´ω`)<そりゃ美術刀ですから。


■美術刀特注の見積もり■

美術刀特注の料金見積もりは、特殊な場合を除き、その場で金額をお知らせ出来ます。
美術刀については今まで製作した特注や当店仕様の別注製作時のデータ蓄積があり、
何より全工程を1メーカーで行っていますので、ある程度まではその場で試算出来るんですな。
(;´ω`)<ある程度を越えるとお時間頂く場合もございます。
(`ー´)<ぶっちゃけ、やった事のない仕様/組み合わせだとメーカーに問い合わせるので時間かかる訳ですよ。

なお、居合刀および美術刀の特注時の価格について誤解されていることが多いのですが、
どちらの場合も「特注料金」とかは発生しません。
例えば「特注だから値段に+○○円」とか、「特注だから価格何%UP」とか、
そういうことは一切ありません。
(`ー´)<以前にも書いた気がしますが、特注というと身構えられてしまいがちなので念のため。
(゜Д゜)<ダイジョウブダヨー コワクナイヨー

例えば過去ウチで紹介した商品で現在店頭に無いモノについて、
特注扱いで全く同じ仕様のものを作った場合は「通常販売価格と同額」になります。
(`ー´)<HP紹介後に価格改定があった商品は、改定後の価格になっちゃうけどね。

…ちなみに特注料金が発生しない理由ですが、
居合刀は元々1本1本が特注しているようなものですから当然として、
美術刀も1本単位で受注/製作してくれるメーカーに発注をしています。
つまり、メーカー企画の商品でも、当店で企画したものでも、お客様が希望した仕様であっても、
造られ方は全く同じなので、価格に差が出る理由も無いわけですな。


■美術刀特注テンプレ■

居合刀特注講座の第1回でやったのと同様、美術刀特注をテンプレ化してみるテスト。
実際に美術刀で特注をする場合、お客様にナニを決めてもらうのか、ってコトですな。
大体こんな感じになります。

・ベースモデル…
・刀身…
 (刃文に種類があるものは刃文も)
・鞘塗…
 (必要に応じてコジリ・柏葉・鞘加工など)
・下緒…
・鍔…
・柄…
・柄巻…

居合刀と比べると、項目は当然減ります。
刃長は刀身を選んだ際に自動的に決まるので項目がありません。
ハバキ・切羽・柄前(柄長)は基本的に固定一択なので、項目がありません。
あと柄についてですが、縁頭&目貫は、基本的には1セットとなり、更に柄下地によって「ある制限」が発生します。
それをテンプレ化すると上のような書き方になるんですが、この制限については、今後の講座で詳しく紹介します。

なお、短刀や二尺刀、太刀拵、薩摩柄、一貫巻などで、また別の制限が出たり項目が減ったりしますが、
それも今後の講座に任せるとしましょう。

…さて、次に具体的な欄の埋め方ですが。
重要なのは一行目の「ベースモデル」。

美術刀特注にあたっては、
「当店商品等をベースモデルに挙げる」→「ベースから変更しない項目はすっ飛ばす」→「変更点を決める」
…という手順がオススメです。
ベースモデルがあると、当店画像や店頭現物を見ることで大幅にイメージが掴み易くなります。
勿論考える項目も減っていくので楽チンです。

具体的に美術刀でやってみましょうか。
えぇと、実際の特注例よりもウチでオーダーしたモデルの方がいいかな。
(`ー´)<客注モデルもウチの別注モデルも、やってることは同じだからな。

…えーと、コレでいいか。


五郎入道正宗 改(通称:給仕正宗)

画像は初紹介時の転用ですが。
これは「アレを美術刀でやってみよう」という思い付きから始まり(アレについては割愛)、
「紫だし正宗が似てるな、ベースにしよう」→「柄、刀身は元のままで良し」→「鍔と鞘塗と、下緒も変えとくか」
…という流れで、この形が出来上がっています。

これがベースモデル付きのテンプレになると……

・ベースモデル…五郎入道正宗
・鞘塗…上黒石目(永倉新八拵の鞘塗)
・下緒…黄(近藤拵の色)
・鍔…金の四方透かし(秀吉拵の鍔)

こうなります。
あ、ちなみに今後の講座で糸や金具や鞘塗に名前を付けていきますが、
別に()内のように商品名で挙げてもらって構いません。ていうか、ウチもその方が楽です。

ちなみに、仮にベースモデル無しでテンプレを作るとこうなります。

・刀身…樋入り正宗刃文(正宗の刀身)
・鞘塗…上黒石目(永倉新八拵の鞘塗)
・下緒…黄(近藤拵の色)
・鍔…金の四方透かし(秀吉拵の鍔)
・柄…柄下地黒、縁/頭/目貫が金(五郎入道正宗の柄)
・柄巻…紫

ほらこんなもん。
行も字数も増えてメンドイですね。イメージもしづらいです。
そしてなにより字数が少ない方がウチの発注も楽です(キリッ
(;´ω`)<いや、項目減らした方がメーカーの間違いも減るからね。ここ結構重要だよ。

ちなみに、お客様からベースモデル設定無しで希望を頂いた場合でも、
見積もりやメーカー発注の際には当店で近いモデルを設定、ベースモデル有りの発注に書き換えることにしています。

…つまり、
ウチが楽に発注組めるようにする為にも、
ベースモデルを設定した特注を強く推奨しております(営業スマイル)
(;´ω`)<…いや、だからメーカーの間違いを減らすのも重要な理由だと言っておろうに。

あ、ちなみに当店で取り扱ったことのない商品でも、同メーカーの製品であればベースモデルに設定出来ます。
当店も、メーカーの製品を全て仕入れているわけではありませんので。


■まとめ■

美術刀は安価な分、特注も比較的気軽です。
美術刀特注についても居合刀と同じく、
出来ることはやりますが、出来ないことは無理♪となります。
出来ること出来ないことの内容が、居合刀とは異なる、というだけのことです。
(`ー´)<まぁ金額・見積もり・納期等あらゆる面で、居合刀より気楽なのは確かだな。


…ってなことで、なんだかんだで長くなりましたが以上、美術刀特注講座第1回でした。
次回からは各部位の解説・紹介に入ります。